ボダナート



 ネパールとイタリアはそっくりだ。イタリアで膨大量の聖画像
や古代彫刻に囲まれると、それらのもつ身体性が、私のそれとは
明らかに異質であると強く直観される。イタリアに始まる西洋文
明は現代日本にも流入し、ミッションスクールで学んだ私として
はキリスト教も含めて日頃慣れ親しんだもののはずなのに、起源
はこんなにもただの地方アイテムにすぎない。文明文化のルーツ
どころか、他者性ばかりが意識される。
 ネパールで私が感じたことも、けっきょく同じようなことであ
る。仏教が日本にも馴染みかと思ったら大間違い。夥しい現地の
仏像に囲まれて実感することは、これらが私とは異質な身体に根
ざした、異国の神々だということだ。もっともネパールはヒンド
ゥーと仏教の習合の地であるが、此処で目にする多くの寺院建築
は、宗派を問わずネパール人の体型そっくりなのである。
 とはいえ、日本に帰国したところで、神社や茶の間に「身体の
居場所」を無条件に感じ入るというわけでもない。この小文に結
論は無いが、ひとつ記憶しているのは早朝のカトマンズの民間寺
院で、本当に多くの地域住民がすがるように参詣しお供えをして
いた光景である。また、いまだにどう解釈したらいいのかわから
ないままなのは、ボダナートのストゥーパで撮影のため乞食をし
てみたところ、本当に施しを受けたことである。

中ザワヒデキ「ボダナート」
2005年1月 4分33秒 縦横比9:16
編集助手=以倉寿哉 撮影地=ネパール、ボダナート

*今週末と来週末、上記作品が渋谷・イメージフォーラムで
上映されます。
詳細: http://www.imageforum.co.jp/cinematheque/936/

同報にて失礼しました。
中ザワヒデキ
http://aloalo.co.jp/nakazawa/





2010-01-22a 「ボダナート」「上海」の二通を同報配信(日本語のみ)。ウェブサイト更新。
書籍「Pahenlo ネパールでアート」美術出版社刊、2007 も参照ください。
- このサイトは本人が作成しています。雑記帳もご覧ください。
- 作品のお問い合わせ、原稿や講演等の依頼はギャラリーセラー宛にメールでお願いいたします。宛先を info@gallerycellar.jp とし、 CCに nakazawa@aloalo.co.jp を含めてください。
2010-01-27a 情報追加。
- おかげさまで先週末の上映は好評でした。今週末も上映されますのでよかったらお越しください。
- 上記同報文面は2007年に書いたもので、上記参照書籍「Pahenlo ネパールでアート」に所収されたものです。同書では、「パヘンロと7人の作家達」の一人として私の「ボダナート」「上海」が紹介されているほか、座談会「パヘンロ、アジア、映像」では大木裕之さん、加藤到さんと私が長篇トークを展開しています。さらに、「画廊との仕事」という私の文章も所収されています。
- 上記イメージフォーラムのリンクから一部コピペしたものをここに置いておきます。

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