中ザワヒデキ Hideki Nakazawa
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2016年度最終講義となります。2001年の同時多発テロ後に機関誌『方法』に寄稿した「芸術原理主義者の処世術」、2017年4月に開催される佐藤尚子展のために寄稿した「色彩絵画の典型」、そして『西洋画人列伝』からピカソの項とルソーの項を読みます。一年間おつかれさまでした。
色彩絵画の典型/中ザワヒデキ(美術家)
色は、いろいろ。様々な多色のきらめきだ。多数の隣り合う画素と画素の彩度と明度の差異の群が網膜上に電位差マップを瞬時に形成し、脳内に感覚の束をさざめかせる。佐藤尚子の『ShokoヌリエMosaico』は、色彩絵画の典型だ。
色彩絵画を突き詰めたものは二つ考えられ、一つは20世紀米国の画家アド・ラインハートのように単色で全体を覆うミニマルなモノクローム絵画、もう一つは佐藤のように多数の異なる色の画素のひたすらな並置である。但し筆者の考えでは、実は前者は色彩絵画ではない。その証拠に、ミニマル絵画はシェイプト・カンバスを経て立体彫刻すなわち形態の追求へと向かった。反対に、後者こそは色彩絵画である。19世紀仏国の画家ウジェーヌ・ドラクロワは、英国のジョン・コンスタブルの描く木々の緑がどうして色鮮やかなのかを「様々な色みの緑が多数並置されているから」と看破、これを色彩の輝きの秘密とした。そもそも日本語で様々な多数を「色々」と言うのは、洋の東西を超えた色の本質がこれだからである。
こうした理論を知らない美術のアウトサイダーでありながら、見事に同じ結論に辿り着いた人たちがいる。ダウン症の佐藤もその一人で、彼女の場合は正確なグリッドではない多数の方形の色点の並置を、自分のため、時には気に入った男性やアイドルへのプレゼントとして、いとも自然に生み出した。一部のアール・ブリュットの表現が、美術の純粋理論にぴたりと一致することについて、筆者は、邪念の不在が理由と考える。「色彩だけでなくて形態も」などと考えると、純粋な色彩追求の手が鈍るのだ。「地域の活性化への奉仕」などは最たる邪念だ。
邪念の無い佐藤の表現は、オリジナルである。色彩絵画の典型ゆえ、同様に色彩を純粋追求した他の美術家の表現に似通うことは、むしろ有り得る。だが何も知らずに描かれた彼女以上のオリジナルなど、有り得ようが無い。
2017-05-31
- Togetter https://togetter.com/li/1093982
- Youtube 1/2 https://youtu.be/a-bR1r48Ppk
- Youtube 2/2 https://youtu.be/rar0LdTBvi0
2017-03-24
- お知らせの誤謬を訂正しました。誤:図書新聞 正:週刊読書人。関係の方々に深くお詫び致します。
- Retweeted 青幻舎 (@SEIGENSHA): 本日発売の週刊読書人に、D・ホックニー×M・ゲイフォード『絵画の歴史』の書評が掲載! 評者は中ザワヒデキさん。美術家ならではの鋭い視点で、ホックニー自身の立ち位置も交えて深く読み込んでくださっています。本書読了の方も必見です!!
https://twitter.com/SEIGENSHA/status/845214588983361537
2017-03-21
- 本頁作成。
- @bigakko @soonchee3the @eri_takada @no9noon @nshopoki @icezukiatsumare @K_mio444 明日2017/3/22(水)は美学校 #文献研究 2016年度第18回(最終回)です。続けて講義用覚書のURLを呟きます
- 【明日】美学校 中ザワヒデキ文献研究 2016年度第18回(最終回) 正規受講者対象 2017年3月22日(水)19:00-22:00 「芸術原理主義者の処世術、色彩絵画の典型、ピカソとルソー」 講義用覚書 http://aloalo.co.jp/nakazawa/2017/0322a.html #文献研究
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