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連作「灰色絵画」 解題
中ザワヒデキ


 絵画の本質は色彩であり、色彩の知覚は三種の網膜錐体細胞に発している。この連作ではシアン、マゼンタ、イエローを等量用い、網膜から脳に送られる知覚情報の総体が灰色となるようにした(脳内混色)。生理学的知見と、印象派の光学理論である網膜混色、カラー印刷ならびにデジタル画像技術を、三進法という数学的手法で統括した作品である。

 それぞれの作品は、0から728までの整数でできている。整数は全て六桁の三進数として表されているため、「000000」から「222222」までということになる。整数は729個あり(0を含めるため)、4374個の数字が使用されている(729x6=4374)。一個の数字は一個の小さな彩色正方形で表されているため、個々の作品は4374画素の絵画であるといえる。0、1、2に割り当てたシアン、マゼンタ、イエローの比率は1:1:1で、各1458画素である(4374/3=1458)。

 「#1」から「#5」までの五作品では、一個の整数を表す六個の彩色正方形ユニットが、横一列の形状となっている(6x1)。これは、数が通常横一列で表されることに拠っている。「#6」から「#10」までの五作品では、六個の彩色正方形ユニットが、縦長の長方形となっている(2x3)。これは、絵画自体が全体で縦長の長方形であることに拠っている。

 「#1」と「#6」では、一直線上に並べられた整数の列が、一定の幅で逐次改行されている(54画素81行)。これは一次元的なテキスト書類の形式であり、下に行くほど数が大きくなるという偏りを伴っている。偏りを取り除き、二次元的な絵画の形式とするために、「#2」「#4」「#7」「#9」では規則的なシャッフルを施し、「#3」「#5」「#8」「#10」では対称性を導入した。

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