1997年02月のまるちめ日記(97.02.01〜97.02.28)

97.02.01(土)
タイガーメンテ後図書館行き、その後祖師谷のGALLERY TAGAに行ってみる。二階建ての木造白壁で、なかなか面白いスペース。鈴木雅博展を開催中。その後久々の印種作業。「逃網」の20番までのリニアボタンの付け直しと、まだ付けてなかった105番くらいまでのすべてにリニアボタンをつける作業。これで今までの「逃網」はすべて「ほどいて」見ることができるようになったとゆわけ。昨日見つけて購入したLONDON社のアイヴズ交響曲全集は、指揮者もばらばらだけれどなかなかよい。第4番は本当に驚くべき曲。今日図書館で借りたCDの中では、名曲で小恥ずかしいがやはりオイストラフのvnで聴かせるシベリウスのvn協奏曲が泣き入ってますね。ヴァルハのバッハもいいし。

97.02.02(日)
先週試行錯誤していた640X480ドットの静止画が、基本単位をRGBYCMとしていたのをRYGCBMに直したら、俄然よくなった気がする。線分構造ではRGBYCMもそれなりに正しく意味があるのだが、環状構造となったときのRとMの連結の仕方に問題ありと感じていたのだ。直すと折角のパレイドリアが弱くなるかと思ったら、その点はさほど問題とならず。昨日に引き続きずっと印種作業……プロフィール(長大)も入れ、顔写真を3点入れ、母にお願いして仕上がってきたデジネン文章の英訳を入れる。

97.02.03(月)
つかの・いけまつはともにもとみやの個展の搬出作業の手伝い。タワシは昼過ぎにやっとホームページ更新完了。もとみやの搬出作業終了後、いけまつ氏が率先して、今日は豆まき。豆まきゃ早速ぱぐちょがついばむ。それにしても寒い。まるで大寒。もとみやは個展本当お疲れさま。うまく行って何より。タワシは澤田さん関係の仕事で重要な発見。

97.02.04(火)
つかの休みの日。ぱぐちょは最近買った羊肉入りのフードを食べない。おいしいのに・・。夜やっと第一段階を澤田さんにFAX。おとといの2次元静止画、やっぱいまいちのような気がして試行錯誤。しかしそれもいまいち。

97.02.05(水)
今日は出社するはずだったつかのは体調が悪く休みで、業務に打撃。ここ数日間ずっとたまってた分があるのだが、しょうがない。タワシの今までの試行錯誤分をまとめてNWにFAX。大学の時のサークル(サウンドクリエイト研究会)の先輩の妹尾氏いらっしゃる。もう10年以上ぶりで、氏も変わられていてちょっと驚く。先月半ばに退アロしたまえだが一瞬やってくる。ストレートパーマをかけてて随分違った印象。まえだじゃないみたい。先月の日記に書いた通りぱぐちょは元服して正式名は正嗣となったわけだが、「正嗣と呼んでも振りかえりませんよ」と、まえだちんの的確なご指摘。久々にイラストの仕事を受けたので、その打ち合わせにアイルクリエイティブの安田さんいらっしゃる。阿久悠氏の作詞CD集のうちの1枚のジャケイラスト。夜、試行錯誤の続き。自らに課したお題は「640ドット×480ドットの2次元彩色平面が与えられたとせよ」なのだが、その解をミニマリズムまたはオプアートの方向性でうまく求めるのは、出来なかったのかもしれない。「いっそのこと」と思い、古風な絵を描いてみたら結局それが一番気に入る。困った。タワシ、古風だった。ここのとこBGMはずっとJON GIBSON。ただのミニマルだが、本当にシンプルなだけの純ミニマルで、こゆのこそ今は聴きたい。

97.02.06(木)
寒電柱今朝もずっしりぱぐのそれ
つかの復活したまった仕事を沢山お願いする。朝パソイラスト。今回が荻窪圭氏の「愛と勇気のマック講座」最終回。その後ミラノの時計屋に渡す東京の地図のイラストに着手。昨夏の仕事の続きのようなもの。夜祖師谷のGallery TAGAにて瀬田哲司展オープニング。ミニマリズムのペインティングとゆ、タワシが今一番関心を持っているジャンル。素敵なDMが来て期待していたのだが、案の定とてもよい。場所柄客は少ないが、岡村多佳夫教授らとお話しする。タワシのことはJAT編集者として知っていただいていた様子。その後、名古屋から来ている作家夫妻を中心に祖師谷で飲む。いろんなところでときどきお会いしていた平岡ふみを氏とも初めてじっくりとお話しし、とても得るところが大きい。瀬田氏の「決めたことは、一番を目指さないということだけです」などの言葉も、とてもよくわかる。

97.02.07(金)
眼科後タワレコでついにシュトックハウゼン「Hymnen」購入。以前ヘッドホンで聴いて買いたいと思っていたのだったが、高額なため躊躇しているうちに店頭から無くなり久しかったのだ。他には武満のLDが出てたので購入。のあと、ワタリウムでシュタイナー展。展示も内容も「プレ・松澤」なかんじでいいのだが、カタログのデザインがよくない。帰社したらメインルームの電球のスイッチ部分が壊れていて、部屋が暗くなっている。しかしすぐ世田美「デ・ジェンダリズム」展のオープニングに、遅れて出かける。びっくりしたことに会場で、隣のおおやさんに出会う。胸にリボンつけてたが、寄付でもされてるのかしら。さだやっこ氏に出会いなぜかいきなりとても緊張される。タワシを見るとなぜかすごく緊張する、のだそうだ。他に赤ちゃん連れの花代ちゃんや、久々の方も含め、いろいろな方に出会う。銀座に行っていたもとみやも遅れてやってくる。オープニングパフォーマンスのビデオ撮影をしていたこだまくんとたにぐちくんのカップルは、たまたま今日本に帰ってきてるのだが今日はアロアロ泊予定。「布団はひとつで大丈夫です」と何度も強調しないでよろしい。帰社したら電気屋さんに来てもらえたようで、メインルームの電気は直って点灯している。秀園で食事後、4人でブリッジを楽しむ。

97.02.08(土)
こだまくん達は朝早くでかけ、もとみやのしきりで羽根木公園に集合し、第一回ぱぐミーティング。馬込さんのとこのよしおくんと、うるまさんの実家で飼われてるはんすけくん。はんすけくんは噂通り巨ぱぐ。しかし予想していたようなデブぱぐではなく、屈強なボデー、もちものも立派な、年季の入った貫禄ぱぐ。よしおくんはなんだか華奢で、色白で、人に登りたがる癖あり。3匹のぱぐは互いに相手の臭いを嗅ぎ合ったりふざけあったり。ぱぐちょは他のぱぐに会うのは、少なくともアロアロ犬になってからは初めて。羽根木公園は明日から梅祭りとゆタイミングで人が多い。夜は梅ヶ丘でみどり寿司を買って、馬込さんとよしおくんは帰ってしまったけれど、うるま氏でるび氏るびでる氏そしてはんすけくんが来アロ。るびでる氏の闘病の話など聞く。

97.02.09(日)
タイガーメンテになんだか時間かかる。日記書き。夜また640X480ドットの静止画の試行錯誤。4〜5日前ダメだと思って落ち込んだストイックミニマル〜オプ系は、今日見てみると、そんなダメなわけでもないかもしれない。

97.02.10(月)
先月のまるちめ日記を書き上げ、日記付随のビジュアルは、昨年までのイラストチック路線はやめて例のオプ系のRYGCBM。CMYK指定をきっちりして寺谷氏宛に入稿。ジャパンミックスの貝瀬氏が16時に現れ、ごめんなさい、まだ一個もできてないのです。近所で飲む。夜ヒルベルト図形型作品の試行錯誤。

97.02.11(火)
建国記念日。あまり眠れず早朝に起きヒルベルト図形作品の正と準をつくり、催促が来てしまったのでミラノの時計屋にラフを取り急ぎお送りし、夜より二部形式のカノンの作曲。作曲といっても音楽作品としてではなく美術作品としてだが、結構面白い。これはバッハ「インヴェンション」弾きの成果の一つ。

97.02.12(水)
昨晩の曲をなんとか視覚言語にビジュアル化したら、それも悪くない。つかのには朝9時半に来てもらい、タワシはすぐアロアロを出てNW houseへ。開催中の展覧はホログラフィのグループ展。遠藤さんとお話しし、ここのとこためていた試行錯誤の成果などお見せし、6月に企画でタワシの個展をやらせていただく事を正式に決定する。普通一年半くらいは予定は埋まっているものなのだが、ここの箇所はたまたま空いていて、たまたま先月、どうですかと言ってくださっていたのだ。考えてみればここ何年間か、作品を「展示」することの意義と、美術界で発表することの意義をうまく見いだせず、オファーがあっても個展はお断りしたりしていたのだった。しかし昨年後半からタワシは美術界でこそ発表したいと思うようになったし、またモニタの中では完結しないことが沢山出てきたので、むしろ自分からも展覧会は是非ともしたくなったわけです。NWははっきり言って打ち放しのコンクリート壁の処理が難しいという躊躇要因もないではないが、このタイミングで個展が決まってともかく良かった。遠藤さんもタワシの話をとても面白がってくださってるようだし、企画展なので1Fだけでなく5Fと6Fも使えて意外と大がかりになるかもしれない。帰社後夕方になって、アスク講談社の飯嶋氏、そしてアーティストの姉川氏がいらっしゃる。最近のマシンでは「キッズボックス」が速く動きすぎるので、限度を設けるなどちょっとだけ改良しようというような話や、こちらからはもちょっと諸業務何とかならないのかとか、「デジネン・プロ」はおたくはやる気がないのか、などの話。昨年のデジネンコンテストの中ザワヒデキ賞の賞品をやっとお渡しする。

97.02.13(木)
花粉キャッチャーつかのによると、今日から大気中を花粉がブイブイ飛んでいるらしい。「鳩よ!」イラスト。先見ゼミの黒ペソ先生の出題は、どーしよーか迷って結局「仲間はずれ問題」。「豚肉、サ変、本能寺」のうち仲間はずれはどれでしょう? そしてミラノの時計屋の仕事はPICTの段階までは済ませ、先週購入した武満LDをやっと見てみたら、単にテレビ番組の再録みたいなもの。ま、映画音楽の映像が垣間みれるからいいけど。

97.02.14(金)
眼科後WAD'Sに視力表ポストカード納品後、タワレコにてピエール・アンリ等購入。のあと大盛堂にて沢山書籍を買い、銀座まで出て重い荷物をコインロッカーに預けて画廊めぐり。今週は面白い展示が多かったようだ。以前太陽誌で書かせていただいたギャラリーQSの諸泉茂氏はまたまたレベルの高い温度計作品。Qの秋元珠江氏は、左右に時差のある雑踏のビデオ・インスタレーションで、好感度大。ギャラリー現の岩川ユキヒロ氏は、物質感ある平面をわざわざ正面から撮影し拡大したモノクロ写真。ダイレクトな視覚的快感と説得力がある。ギャラリー山口地階の若手の木村太陽氏は、やってることも若い感じだが、汚い脚が並んでてコンテンポラリー・ジャパニーズ・ポップなかんじ。帰社しもとみやと外食。ジャパンミックスからの単行本のため、やっと画人列伝その1「ジオット」に着手。

97.02.15(土)
とても寒い。タイガーメンテ。のあとミラノの時計屋仕事をQuarkに貼りこんでFAX&E-mail入稿。結構メガ数あり144モデムでは相当時間かかってしまった。その後阿久悠氏のCDジャケ仕事。タワシの担当分は91〜93年で、結局その時代らしいキャラは何ひとつ描かなかったが、テーマはエコロジー&テクノロジー&ネオサイケってなかんじでいかがでしょうか?

97.02.16(日)
昨夕干した洗濯物は昨晩の雨で全部びしょ濡れ。もとみやが頼んでいたぱぐちょの骸骨服が届き、着せてみたら「正嗣」の語感の合う感じとなる。もとみやとMOT「中西夏之」展、「New York SCHOOL」展、水戸芸「水戸芸術館が目撃した90年代美術・後半」。中西展は噂通りとても素晴らしく、こうしてみるとタワシは80年以降の氏の重要な展示は結構ちゃんと観ていたようだ。新作の星のような穴あきネットは、してやられた感じのするもの。芸大教授就任などの政治的いきさつもあるのかもしれないが、今年は年初にこんな(一般的な意味での)「今年のベスト展覧会」が催されちゃいましたねってな感じ。にしてもタワシは氏の作品をビットマップ/オブジェクト図形方式のタームで語ってみたい。ニューヨークスクール展は噂通りよくないが、タワシが何年も前から言っている輪廻的芸術史観に似た見方で構成されている点で気を引かれる。水戸芸は、遠かったわりにはそれほど面白くない。タワシは中原浩大氏のレゴの作品を再確認することが目的のひとつだったのだが、意外と小さいものだった。タワシの妄想の中では少なくとも2倍以上のサイズに膨らんでいた。

97.02.17(月)
朝の会議は長引き、事務用抽出を2つ空けて(随分昔の郵便物やらフライヤやら溜まっていたものを削除)、今月末のeAT金沢の件でH'action沼田氏とお話して「不可視」を持っていくためモニタ2台という環境を整えてもらうことにし、画人列伝「ジオット」の書き出しを工夫し、残業で遅くなったつかの・いけまつともとみやとで秀園。アイルの安田氏がイラストのアップに来られて、FP510を気に入られる。古い機械だがその後の新しい機械より綺麗なのだやっぱり。

97.02.18(火)
経理関係の雑務と郵便物の整理に時間かかる。 昨日ひとまず入稿したタワシの91〜93年の絵はやはり抽象的過ぎたようで、描き直すことにする。だけれど画人列伝「ジオット」の推敲を先回し。

97.02.19(水)
今日よりマックエキスポ。今年は大判プリンタを見てみたいので、是非とも初日から行きたかったが全然それどころでない。まずは先見ゼミ採点と成績発表。新田氏はやはり、というか期待以上にタワシの出題意図を汲んでくれてる。「先見ゼミ」のログを本にしましょっかと言ってくださっているガビン氏より別件で連絡あり、新創刊される「TV ゲーマー」誌での氏の連載に登場してほしいとのこと。マイブーム系なんだけど今何かにハマッてませんか? とのことなので「何を見てもビットマップとオブジェクト図形方式に2分したくなる」ことをメールで伝えておいたら、「すっごい狭いスペースで、しかも連載第1弾なので、モノとしてひきのあるものを」とのこと。TELにて、「だったら、昨年夏のネタだけれどドッグフードをタワシが食べてるってのはいかがですか?」と言ったら、なんだかそれでよかった様子。ここのとこ各社のドッグフードを食べ比べてるのだ。ほとんど輸入品で時代の趨勢は「自然食品」「無添加」「安全」等。味的には概して薄味でいてコクもあり噛み応えもよい。ヘルシー系な人にはかなりオススメ。ガビン氏は急ぎとのことなので、ぱぐちょとタワシがドッグフードにまみれてる写真をつかのにQ-PICで撮ってもらう。夜つれれこ社中CD「雲」発売記念ライヴat江古田BUDDY。バックが大人数で面白い。

97.02.20(木)
まず昨日のドッグフードグルメの写真に描き込みを加えガビン氏宛にメールし、その後91〜93年の例の阿久悠氏CDジャケイラスト。結局全面的に描き直し、いろいろなアイテムづくしとする。途中でアスク本田氏よりTELあり、久々なので積もり積もったお話。デジネンはフランスの展示会で特にベルギー人に好評だったとか。イラストはバック無しの段階まで一通り仕上げ、午後過ぎにやっとマックエキスポにでかける。時間少なく半分しか回れなかったが大判プリンタの実物を沢山見たりして収穫多い。キューティマスコット等、いつも気になるプログラムを作るコーシングラフィックスのブースで小池邦彦氏らにも挨拶する。

97.02.21(金)
結局阿久悠氏CDジャケはバックにカラフルなグラデまでひくことにし、朝一でバイク便入稿。眼科後ビックカメラで安物FAX機、安物チューナー、安物CDプレイヤ購入。大盛堂で囲碁の本を購入。囲碁こそはビットマップがトポロジーに転化する瞬間の芸術に違いない。川口現美で松澤宥展後期のオープニング。今回はパフォーマンスのしばらく前にちゃんと到着し、会場作品を鑑賞できた。展示作品は前期の方が充実してたかな。パフォーマンスはまず3階で蒼い光の中での「レセプター(超意識受容器)よ」、そして1階での「壊色論」。パーティーでは峯村敏明先生とお話しする。氏にはタワシのデジネンの文章をお読みいただき、面白がっていただいたようだったのだ。他にも古屋氏をはじめいろいろな方とお話しし、2次会でもいろいろお話しする。2次会にあったお酒は「神亀」という名で、プサイ亀よろしく松澤氏も喜ぶ。隣席となったコレクターの川村龍俊さんとゆ方は、ちょっと池内さんに似たタイプかもしれない元気な方。NIFTYのFARTを大改造し、がんばっておられるとのこと。今日出来上がってきた松澤展カタログでは、なんと文献リストの最後の方の年はタワシのガロやらまるちめ日記やらが沢山名前だけ記載されている。

97.02.22(土)
銀座の画廊を巡ってから再びマックエキスポ。前回と併せなんとか一通り見終わることはできたかな? アスク講談社・テレビ東京の共通ブースで、バイトくんに急ぎ作らせたというデジネン立体物を見る。木片に彩色したものを接着した「ぺんぎん」だが、なぜかいまひとつ。やっぱプラスチックでないとダメなのかしら? 木片彩色でもヘタうま感は出ると思ってたけど。大学の時のサークル(美術研究会)の先輩の河本いずみ氏に、10年ぶりくらいで偶然出会う。一緒に軽食するが、氏はほとんど変わっておられず。今日は冷たい強風で超寒い。帰社後タイガーメンテ。

97.02.23(日)
横浜は桜木町の神奈川県立音楽堂で一ノ瀬響氏らの作品演奏会。「第20回神奈川県合唱フェスティバル〜合唱曲作曲コンクール20回記念委嘱作品演奏会〜」ってわけで、委嘱の白羽の矢作家は過去のコンクール受賞者の中から吉川和夫氏、伊藤幹翁氏と一ノ瀬氏の3人。勿論一ノ瀬氏が飛び抜けて最年少。選考委員は間宮芳生氏、林光氏、中田喜直氏、関屋晋氏とゆ豪華メンバー。さらに、各作曲家の作品は入賞作と過去の作品と委嘱作の3曲ずつ、つまり9曲演奏されるのだが、それらをすべて別々の神奈川県下の合唱団が演奏するとゆ意味でもゴージャス。アマチュアではあるが、中には格幅のいい熟年オジサマのコーラスなどもあって、視覚的にも楽しめる。客層はたんに合唱団員の知り合いなので来ましたって感じの人が多そうだったけど、新曲初演も3曲あるし、一度に9個のコーラス隊が見れるしで、実は結構、なかなか滅多には体験できないお得な音楽会だったのではないか? 曲では吉川氏の「スーホの白い馬」が、多声コーラスというタワシの関心事とも接近していて、かなり面白く思う。そしてやはり一ノ瀬氏の入賞作や過去作品はよく構成されていて素晴らしい。しかしなんと言ってもラストの県立多摩高校合唱部の演奏による、一ノ瀬氏の委嘱の新作「夢の如」が、文字どおり快挙だったろう。各声部の器楽的扱いと一ノ瀬氏自身の奏でるアナログシンセのホワイトノイズは、明らかにそれまでの合唱曲とは異なる書法によるもの。氏の最近の他の作品と同じく、至福感がちゃんと醸し出されているが、合唱曲でこんな感情に包んでくれるような作品には、タワシは今まで出会ったことがない。こんな現代曲を制服高校生達が合唱するというのも、なかなか新鮮。演奏会後はディスカッションで、それも皆さん話し上手でとても面白い。特に途中で中田喜直氏が「日本の洋楽史は特にケージの影響以後メチャクチャになったけれど、特に最後の電気を使ったようなのはいかん」みたいなことを言い出し、他の審査員全員が「そうは思わない」などと言い始め、林光氏が「このように意見の異なる人達が毎年審査をしてるのですから、その苦労たるやいかほどか」などとまとめて会場の笑いをとるなど、その面白さやいかほどか。聞くところによると以前中田氏と林氏はケージ受容是か非かで大論争をした仲だとのこと。逆に言えば一ノ瀬氏の最後の作品は、ちゃんと正当な物議を醸したわけでもある。  その後、喫茶しながら懇親会に出た一ノ瀬氏を待って、合流してからは皆でみなとみらいまで行って食事をしたり、打ち上げ気分で観覧車に乗ってみたり。タワシは実は美術作品として作曲中の曲を、個展の際に一ノ瀬氏にリアライズしてもらおうと考えていて、帰り道すがらお願いする。

97.02.24(月)
朝ぱぐちょは寝坊してて散歩には行かず。こんなことは珍しい。金曜に買ったPanasonicのFAX機が届く。これで10年近く使ってて汚れがひどく毎年メンテに8000円もかけてたSHARPのFAX機とはおさらばだ。それにしてもなんだか今日は無闇にキーボードを叩きたい感じ。なのでたまったメール返事書きが楽しかったりする。池松っちがたまごっちを持って来アロ。仕事で借りているのだそうで、珍しいらしい白のもの。仕事とは、もとみやが結局装丁デザインのディレクションをすることになった(実作業は大岡と前田に外注)たまごっち本に、マンガを描くのだとのこと。今1才のこどもっちなのだそうだ。……あ、3時半頃3才のくちばしっちになりました。やっと先見ゼミの過去のログをMOにまとめ、覚書も添えてガビン氏に発送。そうそう、こんなところでナンですが、もしかして先見ゼミ本などが出る曉になったりするようなことが有った場合、今までの回答答案、掲載させていただいて宜しいでしょうか??>回答者のみなさん。万一進展しそうになったら、改めて詳しくご連絡差し上げます。夜、せがまれぱぐちょ散歩。U2。そうそう、現在Oの方は出会う電柱の大体4割ほどの回数。いまだに片足を挙げるOの格好のままUする癖は抜けてない。

97.02.25(火)
昨日届いたFAX機はオートカッターと確か説明されて買ったのだが、調べてみたらオートではなかった。タワシの確認不足でした〜申し訳ない>アロアロのみなさん。なお買うときは気付かなかったがこれは「おたっくす」の一種だった様子。実は店員にもっと勧められた某社の某FAXってものがあったのだが、デザイン的にそれはかなりひどく、こちらの方がまだ良かったのだ。澤田さんと連絡し、昨年3月にちょっと進めた別件をリライトして見てもらい、継続することとする。今進めてる本件も大丈夫行けそうとのこと。明日からのeAT金沢のための準備。先日会った河本いずみ氏がタワシのホロスコープを作ってメールで送ってきてくだささる。興味からとは言え、ありがとうございます。現実派的性向とアート至上主義的性向がどちらも譲らず強く拮抗しているなど、なかなか思い当たるところあり。

97.02.26(水)
朝一で8600からビデオカードを引き抜き持参し、10:55am羽田空港発JAS便で小松空港(金沢)へ。今日より「eAT'97金沢」とゆ、金沢市がらみのエレクトロニックアーティストの祭典(だそーだ)。eATとはelectronic art talentとのことで、今年はその第一回。会長は金沢の山出市長、委員長は浜野保樹先生で、毎年交替予定の総合プロデューサーは今年は江並直美氏。小松空港ではすでにハクション沼田氏がスタンバってくれてる。初めての金沢は大雪かと思いきや、ほとんど雪なくちょっと拍子抜け。いつもだと雪だが、今年は少ないとのこと。貸切バスで今晩宿泊予定の金沢ニューグランドホテルに到着しすぐチェックインし、最上階レストランで昼食をいただきながら松本弦人氏、沼田氏と打ち合わせ。弦人氏の「銀色部分を削る当たり付き名刺」で、のっけから沼田氏は一本とられてる。弦人氏とタワシでは話してるとすぐ面白い話になってしまうので、明日2人でやるセミナーの最大の準備は、では打ち合わせをしないことだ、などと打ち合わせる。その後開会式が向かいの文化ホールであったのだが、タワシはちょっとオミットして一人で金沢見物。髪を切りたいがなかなか見つからない。兼六園まで歩き、中を散策。なるほどこれが宏大・幽邃・人力・蒼古・水泉・眺望を兼六する日本三大名園の一つか。冬なので各樹木が保護用のわら(綱?)でグルグル巻きになったり枝が吊られたりしている。観光客のチーズだらけの中を早足で歩き、反対側の出口の外の県立美術館に行ってみる。ちょうど常設展と常設展のはざまで、写真のグループ展しかやってない。タワシの目的は過去の美術展カタログや他の地方美術館の展覧会カタログのチェックなのだが、図書閲覧室も休室。また市街地に戻り、やっと一軒、いわゆる床屋さんを見つけ、髪を切ってもらう。ゆったりした椅子で左に小さいテレビが点いており、洗面台その他の各機能もばっちり充実してるような、典型的だけどなかなか都内にはないかもしれないタイプ。タワシは細かくいちいち注文するのだが、かえってこのような床屋さんの方が美容室の人よりうまく意思が疎通することが多い。結局、半ばテクノなザンギリ頭となったが、がんばってくれた床屋さんも驚いていて、「こういう髪型は、大人では本当初めてです〜」と何度も感心している。夕方より大会場でオープニングパーティー。「タンカー事故で重油が出ましたが金沢の魚は大丈夫です、おいしいです」などとも触れられた市長の挨拶の後、お囃子が呼び物として出てくる。非常に面白い。「アイディア」誌の吉田秀道編集長や、タナカノリユキ氏と喋る。特にタナカヘイヘイ氏は、今まで突っ込んでお話ししたことはなかったのだが、話すと共通して持ってる問題意識が多く、また80年代〜90年代を通して見てきたものもかなり共通していて、半ば冗談半ば本気で一緒に本を出そうかなどと言うくらい、当時の証言系の話が出てくる。その後部屋は替わってお座敷で、市長さんが律儀に一人一人に回られる。だからというわけでは全然ないが、どことなく天谷社長に似ている。江並氏のしきりは、流石キャラクター。そしてさらに外に出て、まずカラオケルームで飲み、さらに「蓉子の部屋」というとても強力な感じのママ姉妹がやってるシャンソンパブに行く。ひらひらしたドレスで上手にシャンソンを弾き語りする蓉子さんに「昔からお客さまによく言われるの。ピアノも歌声もみなよくなびくけど、なびかないのは蓉子の心だけって」みたいなことをいとも自然に口走られた曉には! 最後にラーメンで締め。

97.02.27(木)
朝食では河口洋一郎先生と一緒になりいろいろお喋りし、その後全員で送迎バスで金沢市民芸術村に入る。ここは元紡績工場だったところで、今回のeATはその柿落とし的意味あいもあるらしい。意外と寒く、途中でジャンパーをホテルに置いてきてしまったことに気づくがちゃんとハクションさんが持ってきてくれていた>御世話になります。ところで沼田氏はタワシがいつの間にか髪を切っているので驚いている。弦人氏とタワシは午後の2時限目のセミナーだが、今のうちに機械関係の仕込み。予想していたように「不可視」に必要な1280X1024のサイズはプロジェクタでは映らず、即席で「不可視」の手前パネルを640X480用にレイアウト替えしたのを作っておいたりする。そんな作業で午前は潰れ、午前に開催されていた出版関係のゼミは見れず。
 午後の1時限目は同時進行で3つのセミナーだったが、タワシが見たのは今回とても楽しみにしていた高橋悠治氏と荻野正昭氏のセミナーで、タイトルは「指はデジタル、手はマニュアル」。しかし内容は、なんと悠治氏はもうコンピュータは使わないという話。見せてくれたビデオはインドネシアの民間伝承のポリリズムが生成されるサマ。年に一回、ある果物がなる季節になると、竹製の楽器作りからはじめてその部族の音楽を全員参加で儀式として行うのだ。複雑なリズムなのに間違ったり正しかったり、本人達はわかってやっている。終了後はその楽器はまた自然に戻すので、年に一回だけの記譜によらない(ROMを持たない)伝承形態。悠治氏はその中に入って一緒に溶け込んでいて、とても面白いビデオ。その後ワークショップとなり、奥様の美恵さんと江並氏と弦人氏とタワシも壇上に上がり、みながそれぞれあるルールをもって竹の楽器を鳴らして作る、ポリリズムの実験。リズム上での緩い対位法的ポリフォニーとでも言うべきか? 素朴な発想だがこれもなかなか面白い。そして最後に悠治氏のピアノの演奏があり、曲目はサティのジムノペティから何曲か。以前国立劇場で聴いた氏の曲のライヴの至福感とは違うけど、こんなセミナーでも共通する何か同じ雰囲気がある。なかなか素敵なひとときでした。
 次の時限もやはり同時進行で3つのセミナーで、弦人氏とタワシのセミナーは、タイトルは「デザイナーの作るアプリケーション」。本当はタワシはアーティストであってデザイナーではないので、では「社長の作るアプリケーション」にすればどっちも社長だからいいかもしれない、と以前沼田氏に話したのだが、だと誰も来なくなってしまうかもしれないってことで一応タイトルは「デザイナーの作るアプリケーション」。先にタワシはデジネンの話をし、次に弦人氏が開発中のブックメーカーや、ジャングルパークから入ってディレクターの話等。そして最後にタワシは「不可視」も少し見せる。今回は他に司会者なく2人でやったので、ついついお互い同士で話し合う感じになりがちだったかもしれない。2人の話したい話題の方向性も、思考の仕方も、ちょっと違ってたかしら? 終わってから吉田氏に「不可視」はとても面白いとご感想をいただく。ビットマップが原子論、オブジェクト図形方式がイデア論というのもわかりやすかったようだ。
 これで本日の芸術村メニューはすべて終わり、貸切バスに乗って、ちょっと離れた湯涌温泉の白雲樓ホテルという、天皇も宿泊するような由緒系老舗旅館に行く。ここは本日はeATで貸切で、われわれ講師陣とスタッフの他、一般のeATのお客様も大勢宿泊するのだ。金沢市の林さんがおっしゃったように建物の中は非常に入りくんでいて複雑。夕食までに30分ちょっとあったので早速露天風呂に行き、河口氏や江並氏も一緒となる。夕食後は浴衣のまま和室でビールを飲みながらの夜塾で、弦人氏、吉田氏、ソフトウェアデザイナーの井口尊仁氏、アクシス誌の宮崎光弘氏も一緒の部屋。やはり壇上にいたときより突っ込んだ話ができる。井口氏は以前からタワシのバカCG的な活動に疑問を持っておられたようで、その辺の意見交換をしたらむしろ今ではお互い同じ意見の持ち主となっていることがわかったりする。結構盛り上がった後、大広間でのガヤガヤの中に埋没。夜はどんどん冷えて寒くなり、結局朝5時くらいまでいろいろな人と喋り続ける。

97.02.28(金)
朝食後白雲樓ホテルを出て芸術村に戻り、閉会式などはオミットしわれわれ4〜5人は暖かい陽気(4月並とのこと)の中を兼六園まで行ったり、その中の伝統産業工芸館を見たり(九谷焼等)、市街地を歩いてそば屋で昼食したり、金沢ニューグランドホテルそばの南蛮様式の門構えの尾山神社に行ったり、そこのベンチで弦人氏とタナカヘイヘイ氏は寝てしまったり、タワシは例の如くいちいち解説の能書きにハマッたり、井口氏とお喋りしたり、芸術村に戻って記念写真に間にあったり、そしてなんだか疲れて飛行機で帰京。アロアロ着いたら先週買った安物CDプレイヤと安物チューナーが届いている。