方法絵画、方法詩、方法音楽(方法主義宣言)
二十世紀の諸学諸芸に民主主義体制の結果として林立した同語反復は、形式ではなく方法への還元によって、再び単一原理として語られ始めなければならない。同語反復が意味する無意味は感覚主義や衆愚の口実とはならず、むしろその権威化には禁欲と戒律が要請される。
方法絵画は、偶然と即興を禁じて方法自体に重ね合わされた色彩平面である。ただし、快楽に直結する実際の色彩は、周到に他の物質に置換されることもある。
方法詩は、私情と没入を禁じて方法自体と化した文字列である。ただし、抒情を叙事する実際の文字は、周到に他の記号に代替されることもある。
方法音楽は、表情と速度を禁じて方法自体が具現した振動時間である。ただし、愛欲を加減する実際の振動は、周到に他の事象で代用されることもある。
これらの方法芸術は、一方ではそれぞれの形式が依拠する伝統に回帰しつつ、他方では単一原理を同時代的に唱和する。われわれ方法主義者は、放縦と怠惰を学芸にもたらした自由と平等を懐疑し、倫理としての論理を復権する。
補遺一
篠原資明は、十年ほど前から自作を方法詩と呼んでいる。氏の活動に敬意を表しつつ、同語を拡大・再解釈して用いる。
補遺二
本宣言に対する賛同者は、「賛同 氏名(肩書)」と末尾に書き加えた上で、自己の責任によって、知人に転送して構わない。部分的賛同者、非賛同者も同様である。もちろん、氏名を追加せずに転送したければ、それでもよい。
西暦二千年(平成十二年)一月一日
起草 中ザワヒデキ(美術家)
起草立会 松井 茂(詩人)
起草立会 足立智美(音楽家)
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